ここ数年、日本においても学生起業家が注目を集めるようになり、数億円の大型資金調達をする例も出てきました。しかし一方で、「大学生の起業意識調査レポート」によると、卒業直後に「創業者として自分の会社を経営する」と答えた日本の学生はわずか0.9%にとどまり、世界50か国の平均18.8%に比較し20倍以上の差があります。在学中における起業意識を調査したものではありませんが、日本においては、起業願望は決して高いとは言えないことが分かります。

さて、今回はそうした背景を踏まえつつ、日本における学生起業が進まない現状と学生時代に起業するメリットをご紹介したいと思います。

『調査結果における日本のサンプル分析-』

1.学生起業の現状

あの人も学生時代に起業

今や誰もが一度は耳にしたことがあるであろう Microsoft、DELL、Facebook、Dropboxはいずれも創業者が学生時代に起業した企業です。

創業の経緯等詳しい説明はここでは省略しますが、現在も世界のトップとして君臨する創業者はいずれも大学在学中に起業しています。

Microsoft

創業者:Bill Gates

当時ハーバード大学の学生だった19歳の時に友人と起業(正確にはマイクロソフト社という法人は当時存在していない)

DELL  

創業者:Michael Dell

テキサス大学の学生時にパソコン保守を行う会社として創業。

Facebook

創業者:Mark Zuckerberg

ハーバード大学在学中に大学の友人とFacebookを立ち上げ。

Dropbox

創業者:Drew Houston

マサチューセッツ工科大学在学中に友人と立ち上げる

Box

創業者:Aaron Levie

20歳の時、南カリフォルニア大学の学生寮でBoxを立ち上げ

日本人の若者の起業への関心について

日本人の若者の起業への関心について

学生に絞った統計ではありませんが、日本、アメリカ、インド、フィンランドの4か国の若者(18~29歳)に対する『アムウェイ 若者の起業家精神調査レポート』(2016年実施)によると、起業に対する関心が日本は約33%、起業大国アメリカの約75%の半分にも及びません。この数字はフィンランドの51%、インドの88%に比較しても低いといえます。

また、『2018年卒マイナビ大学生就職意識調査』によると、大手企業志向は続いており、「安定している会社」(30.7%)を希望する学生が「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」(38.1%)に次いで多くなっています。

こうしたことから、近年大型資金調達をする学生起業家が注目される一方で、依然として安定志向が強く、世界的に見ても特異であることがわかります。

2.学生で起業することのメリット

さて、日本ではまだまだ起業に対する関心そのものが低い傾向ですが、学生の間に起業することのメリットはどこにあるのでしょうか。

圧倒的な経験値が得られる

学生起業で大成功を収めている事業もあれば、失敗する事業も当然に存在します。しかし、社会人経験がない中、自らリスクをとり起業した学生起業家は、その失敗さえも次のステップに大きな利点となります。

様々人脈や経験をした学生起業家は、一般的な学生生活を送り、就職活動をしている学生とは比べ物にならないほどの差が生じています。インターンシップをする学生も都市部を中心に増えていますが、贔屓目に言っても一担当者レベルの経験しかさせてもらえないのが実情で、多くの場合は雑務処理や、アルバイトの延長線上のような仕事をすることが常ではないでしょうか。一方で、起業家になれば必然的に経営者と折衝したり、様々な法・税務的手続きをしたり、営業をしたりと、普通の会社に就職しても中々できないような経験をわずかな期間に体験することができます。

こうして得られた経験は、仮に起業が失敗に終わったとしても無駄になるものではありません。

数年前にある大企業の経営者から、「学生時代に起業し、失敗した経験のある学生の方が、どんなに高学歴でどんなに難しい資格を持っている学生よりも魅力的」だと伺ったことがあります。もちろん、高学歴者、有資格者を否定しての発言ではなかったのですが、勉学やスポーツ以外でリスクを冒して挑戦し、その過程で得られるであろう経験を評価しての発言だっとと思います。

明るい未来の可能性

明るい未来の可能性

上記では失敗した場合を仮定しましたが、成功した場合はどうでしょうか。何をもって成功かは人によって異なりますが、ここでは一例として金銭面でお話させていただきます。

総務省統計局の発表している『家計調査報告 貯蓄・負債編 平成29年(2017年)平均結果の概要(二人以上の世帯)』によると、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の平均貯蓄額(保険商品、有価証券等含む)の平均値は1,327万円となっています。単純な比較はできませんが、Forbesの発表している『Japan’s 50 Richest People』で1位の孫正義氏の資産は約219億ドル(約2兆5千億円)となっています。世界で見れば、Amazonの創業者ジェフ・ベゾスの約1120億ドル(約12兆円)となっています。

単純比較できないにしても、一般的なサラリーマンとして勤め上げた場合と、起業し成功した場合とでは、雲泥の差があることが分かります。

好きなことができる

学生時代に起業を考えている方にとっては、これが一番の動機であり、メリットかもしれません。一攫千金を目指すのも悪くはありませんが、自身が得意とすること、興味をもっていることを仕事にできることほど幸せなことはないのではないでしょうか。冒頭で触れた世界有数の創業者も、探求心や、「こうしたらもっと便利な世の中になるのではないか」という想いが原点になっています。

しらべぇ編集部の2017年調査によると「好きなことを仕事にすることができた」人の割合は平均で27.7%で、経営者に限ってみると48.1%になっています。経営者といっても起業家とは限りませんが約半数の経営者が好きなことを仕事にしていることが分かります。一方で、平均すると全体で70%以上の人が自分の好きではないことを仕事にしていると言えます。好きなことを仕事にできることが幸せかどうかは意見の分かれるところではありますが、一つの動機にはなるのではないでしょうか。

唯一のデメリット?

もし、デメリットを上げるとしたら学業と仕事の両立だといえます。事業に掛ける時間が多くなればなるほど、当然学業に充てる時間は少なくなっていきます。冒頭で触れた米国の有名創業者らも学業との両立が不可能となり、大学を中退している人ばかりです。

これは、彼らが「サービスや製品の提供を開始するのは、とりあえず卒業してからでもいい」といった中途半端な考えを持っていなかったことの表れでもあります。つまり、何のための学業かを考えれば大きなデメリットとは言えないかもしれません。むしろ、学歴に関わらず何かを成し遂げたいという強い意志がある人が起業家に向いていると言えるかもしれません。

おわりに

日本における若者の起業志向は上昇しているとは言えない状況です。Entrepreneurship(起業家精神)が弱いだけではなく、失敗への恐怖心や、資金調達の難しさもその要因と考えられています。国内では、TORYUMONに代表される学生起業家を対象にしたイベントも増えつつあります。こうした学生起業家への支援の場や、成功事例も増えていくことも若者の起業促進に不可欠です。

また併せて、「新卒」という概念、「転職」への抵抗感、「体育会的企業文化」等々、日本社会の独特の慣習への礼賛は拭い捨てる必要があります。そうした慣習は20年前までは通用していましたが、「Japan as Number One」と言われた日本も、もはや過去の話となっています。バブル期以来の好景気と言われる一方で、革新的なサービスや製品を日本企業は提供できなくなっています。

こうした現状を打破し、再び日本企業が世界に向けて新たな価値観を提供する日が来るのは、若者の柔軟な発想からこそ、生まれてくるものではないでしょうか。

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