前回に引き続き、今回の記事でもサブスクリプション型ビジネスで用いられる、いくつかの重要な指標について解説させていただきます。

前回の記事では、月ごとの経常収益の総算を示すMRR、顧客一人あたりの平均収益を指すARPU、そして顧客獲得の為に費やされたコストを表すCAC、と指標の中でも根幹を成す3つをご紹介させてもらいました。今回もグラフや例を取り入れながら、出来るだけわかりやすく説明していきたいと思っています。それでは早速、本題に入らせて頂きます。

顧客転換率(Conversion Rate / Trial Conversion Rate)とは

コンバージョン率とも呼ばれるこの指標では、一定の期間内で、どれくらいの顧客が収益に貢献する顧客に転換したかの割合を算出してくれます。これは、様々なビジネスの種類によって用いる分子・分母が異なるため、ビジネスにあったデータを使用する必要があります。

顧客転換率

例えば、eコマースの場合は、サイトに訪れた合計訪問者の中で、どのくらいの人が実際に商品購入に至ったかについて、割合を求めることが可能になります。この場合計算式は、「購入者数」と「合計サイト訪問者数」が用いられます。

顧客を獲得するために、SaaS型ビジネスでは、まずは実際に体験してもらうために無料トライアルを提供し、購入の有無を決めてもらうといった販売促進戦略が使われます。一方、音楽配信サービスやスマホゲームアプリでいえば、課金することで、より質の高いサービスを受けることが可能になるなど、様々なビジネス戦略を駆使して課金ユーザーへの転換に働き掛けています。

ここでは、スマホゲームアプリを例にとって実際に計算してみたいと思います。転換率の変化をわかりやすくする目的で、毎月のアプリダウンロード合計数を2,000人と固定して比較してみます。

9月 10月 11月
課金ユーザーに転換した人数 300 500 100
月間アプリダウンロード数 2,000 2,000 2,000
顧客転換率(コンバージョン率) 15% 25% 5%

10月では、2,000件の総ダウンロード数の中で課金ユーザーになった数が500人となっているため、25%(=500 ÷ 2000 = 0.25 )のコンバージョン率を達成しています。

一方、11月のデータを見てみると、課金ユーザーへの転換人数が100人にまで減少してしまったため、コンバージョン率も5%(= 100 ÷ 2000 = 0.05)と同じく減じています。これは、11月にかけたプロモーションやイベントが、10月のものと比べ弱かった可能性も考えられますし、顧客が無課金のままでも十分に満足できると判断したとも考えられます。収益拡大の為には、12月に何らかのアクションをかけて、コンバージョン率を引き上げる必要があると考えられます。

このように、コンバージョン率を分析することで、無料トライアル版の効果、プロモーション毎の顧客反応などが分かるので、今後の顧客へのアプローチ方法を検討する際に、非常に重要になってくる指標と言えます。

解約率(Churn Rate)とは

サブスクリプション型のビジネスモデルで最も重要とされる指標は解約率です。月額課金で運営される企業は、顧客の継続が収益に直接的に反映する為、どれだけ新規顧客を獲得していても、解約する顧客の数が多ければ、収益を伸ばすことはできません。その為、企業は常に顧客が期待する水準を満たし、解約率の減少に努め、少しでも長い期間の契約を持続していく必要があります。

解約率

解約率は、上記の計算式で求めることができます。一定期間の解約総件数をその期間の顧客合計数で割ります。数値が高いほど、解約に至った顧客の割合が高いことを意味します。

下の例では、顧客数、解約数、解約率それぞれがグラフで示されています。3月〜4月を比較してみると、顧客数は700人もの増加があり、一見好調にも見られますが、解約数が450人と高い数値が出てしまったために、解約率も比例して14%と上昇しているのが確認できます。

一方、5月〜6月の顧客総数をみると、増加が見られません。しかし、企業がなんらかの形を通して解約件数の減少を成功させたため、解約率も同時に下げることを達成しています。

1月 2月 3月 4月 5月 6月
解約件数 0 200 300 450 200 100
顧客総数 1,000 2,000 2,500 3,200 4,000 4,000
解約率 0% 10% 12% 14% 5% 2.5%

顧客を維持するコスト

一般的に、新規顧客を獲得するために費やされるコストは、既存顧客を維持するコストよりもはるかに大きいと言われています。したがって、解約率の上昇が見込まれた際には、大幅な新規顧客獲得の戦略を練ることも大切ですが、現時点で利用してくれている既存顧客が満足しているのか、解約に繋がった原因は何なのか、などを分析調査することも極めて重要になってきます。

また、カスタマーサクセスを設け、顧客が抱える問題にいち早く気づき、解決に導いていくことで、より良い関係性が築かれ、契約維持への推進が期待できるようになります。

顧客生涯価値(LTV, LifeTime Value) とは

ライフタイムバリュー(LTV)と呼ばれるこの指標では、顧客がそのサービスや商品を使い続けている間で、企業側が得られる一人の顧客からの収益総額を示します。

先ほどもお伝えしたように、単発で企業と顧客間の関係性が切れてしまう売り切り型ビジネスと異なり、サブスクリプション型ビジネスでは、顧客との永続的な関係性が望まれます。要するに、一人の顧客が長い期間をかけて継続的に収益に貢献してくれるサイクルが理想的なので、LTVは顧客がどれほど企業に対して価値を見出しているかを教えてくれる指標であるとも言えます。

ライフタイムバリュー

上記の式から分かるように、解約率の変動はLTVに大きな影響を与えます。解約率が上昇してしまえば、LTVは低下し、解約率の減少に努めれば、LTVも増大し、さらなるビジネス成長を期待することができます。

簡単な数字をあげて、実際に計算してみようと思います。一般的に、SaaSビジネスは比較的高い売上総利益率を持つと言われていますが、この例ではARPUを1,000円、粗利率を50%と定めて計算しています。

ライフタイムバリュー

上で見られる様に、解約率がどれほどLTVに影響しているかが確認できます。解約率が1%の場合の、50,000円のLTVと、10%の場合の5,000円のLTVとでは、大きな差が生じています。

このように、LTVを算出することで、今後企業が、収益を維持しながら新規顧客獲得に費やすコストの上限や既存顧客の維持費など、様々な部署が関わる重要な意思決定に役立てることができるので、中でも注目されている指標の一つです。

この指標が注目されている理由の一つとして、顧客管理(CRM-Customer Relation Management)システムの普及が考えられます。

CRMシステムを用いれば、異なる趣味趣向を持った顧客一人ひとりの情報を管理・分析し、顧客ニーズを十分に満たし、ロイヤリティを高めていくためにどういった施策が必要か分かります。企業は、その結果を踏まえて、顧客に継続的に購入してもらう環境を創りだし、提供する商品やサービス、そして企業への価値を感じてもらい続けることで、LTVを高めることができるようになります。


サブスクリプション型ビジネスで用いられる重要な指標の第二弾として、顧客転換率、解約率、顧客生涯価値(LTV)について解説させていただきました。

ビジネス指標の知識を拡げ、さらに効率性の高いシステムや戦略を駆使して、顧客との関係性や収益拡大といった、様々な目標を達成していただきたいと思っています。様々なコンテンツのブログの更新情報をアップしているので、ぜひKINCHAKU Facebookページのフォローをよろしくお願いいたします!