反社会的勢力と企業の関わりが後を絶たない中、他人ごととして捉えるのではなく、いかに自らの問題として取り組むことができるかが重要になっています。

反社会的勢力と関わりを持つことによるリスクと、その防衛策についてまとめましたのでご覧ください。

昨年一連のスルガ銀行の不適切融資問題の中で、反社会的勢力(反社)との取引も指摘され話題となりました。

また、反社会的勢力の実態が不透明化する中で、警察庁によると2018年の資金洗浄(マネーロンダリング)と疑われる取引は過去最多となっており、仮装通貨の普及に伴い件数も増えています。(マネロン疑われる取引、過去最多 仮想通貨がらみも急増 2019/2/28 朝日新聞デジタルより)

事実として、金融庁は昨年の6月に仮想通過交換業者6社に業務改善命令を発令しています。この中には、反社と気づいていたにもかかわらず取引を続けていたものも含まれており、依然として反社と関わりをもつ企業が後を絶たないことを示しています。

反社会的勢力とは

反社会的勢力の巧妙化、不透明化が著しいため、明確な定義はされていませんが、一般的に次のような団体や人を反社会的勢力と見なしています。

  1. 暴力団
  2. 暴力団準構成員
  3. 暴力団関係企業
  4. 総会屋等
  5. 社会運動等標ぼうゴロ
  6. 特殊知能暴力集団等

反社会的勢力の目的

反社会的勢力の目的

反社会的勢力は一見して反社であることが分からないように、巧妙に偽装を行って表社会と溶け込んでいます。こうした手の込んだ偽装を行いながら彼らが得ようとしているものは、言うまでもなく金銭です。

後述するように、反社会的勢力との関りが公になれば、取引の責任をとって役員陣は交代を余儀なくされたり、会社全体にとっても取引先の喪失、最悪の場合倒産というリスクを孕んでいます。

こうした弱みに付け込み、金銭を脅し取るのが彼らの目的の大きな一つです。

反社チェックの必要性

巧妙化、不透明化する反社会的勢力と関わりを持つことが無いようにするのが反社チェックの目的です。契約に至る前に真偽を明らかにし、取り返しのつかない事態にならないために反社チェックは非常に重要です。

東京都の暴力団排除条例を見ると、取引を介する前に反社チェックを行うことは努力義務と定められています。

(事業者の契約時における措置)

第十八条 事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。

反社との関わりにより生じるリスク

反社会的勢力との関わりを持つことが何となく良くないことは衆目の一致するところではあると思います。しかし、では一体どういったリスクが具体的に考えられるのかをここでは見ていきます。

レピュテーションリスク

レピュテーションリスクとは文字通り、レピュテーション(Reputation:評判)が失墜することをいいます。反社会的勢力との関りがあったことが明るみになれば、取引先だけではなく、その他多くの消費者にまで影響は及びかねません。

取引相手が反社会的勢力であったかを知っていたかどうかに関わらず、取引の実態があったという、この一点について社会からの評判は失墜することを覚悟しなければなりません。

取引拒絶

契約書に予め反社条項を設け、反社との関わりをもった企業との取引を排除している企業は、今日において一般的です。反社条項の入った契約書を取り交わしていれば、契約の解除対象となり、自動的に取引が打ち切りになります。

取引先が、上述のレピュテーションリスクを回避するために、こうした行動を取るのは当然で、取引先が自らの会社を守るために取引打ち切りをすることは、覚悟しなければなりません。

融資拒否

融資拒否

平成20年のスルガコーポレーション事件では、反社会的勢力との関わりが発覚したスルガコーポレーションは、金融機関からの資金調達が困難となり、民事再生手続きに追い込まれました。

現在、銀行取引約定書には反社条項が組み込まれており、反社会的勢力との関りが発覚すれば、借入金の一括請求をされる可能性があります。仮に一括請求とならなくても、融資が継続して受けられなくなる可能性もあります。

つまり、資金繰りに影響を与え、最悪の場合倒産に追い込まれる可能性もあることを知っておく必要があります。

反社チェックの方法

ではそうしたリスクを回避するにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは、広く企業で行われている「反社チェック」とよばれる方法についてご紹介します。

登記簿謄本で確認

手間と時間も掛かりますが、登記簿謄本を取り寄せて会社役員の状況を確認する方法があります。

登記簿上に記載されている役員名をインターネットで検索し、反社との結びつきがないか確認します。同時に、頻繁に役員や本店所在地、商号などが変わっている場合など、登記上に不自然な箇所があるかどうかも注意が必要です。これは、過去の犯罪やトラブルの実態を隠ぺいするために行われることがあるためです。

検索サービスの利用

検索エンジン

Googleなどの検索エンジンを使って調べる方法が、最も簡単でコストがかからず、今すぐに始められる方法です。しかし、膨大な量の検索結果から、欲しい情報を取捨選択することは容易ではないばかりか、情報の確実性という点からも後で紹介する方法よりも劣っていると言わざるを得ません。

日経テレコン(新聞、雑誌記事の検索)

日経テレコンは過去の新聞、雑誌記事を一括して検索できる有料サービスです。複数の語句を組み合わせて検索することで、検索対象者が過去に何らかの事件に関与していたかどうかを調べることができます。なお、古い記事については一部匿名化されている場合があるため、全てを網羅することは不可能であることに注意が必要です。

Quickスクリーニング・システム

このシステムは株式会社エス・ピー・ネットワークが提供している反社チェックに特化した有料サービスです。同社は警察出身者によって創業された、リスクマネジメントコンサルティング会社です。独自のデータベースを持った反社チェックサービスを提供しています。公知の情報を基にする点は、日経テレコンと同じですが、日経テレコン上では匿名化されている人物名も実名で検索することが可能で、日経テレコンよりもより精度高くチェックが行えるといえます。

また、検索結果では見分けがつかなかった場合や、念のため確かめておきたい場合などには、別途個別に対応することも行っているようです。

取引開始前の反社チェックだけでは不十分

反社チェックは取引開始前に行っている会社は少なくないかと思います。しかし、そうした運用だけでは不十分で定期的に全取引先について再チェックを行うことも必要です。

取引開始時に反社との関わりが無かった企業でも、その後役員の交代や、何らかの事象により反社との関わりを持つようになることも否めません。定期的に反社チェックを行い現状を確認できる仕組みを整えておく必要があります。

契約に反社条項を入れよう

反社チェックにより、反社会的勢力ではないことがわかった相手であったとしても、今後そうした勢力と関わりをもつ可能性はゼロではありません。そのため、契約書には必ず反社条項を挿入し、取引の相手方が反社会的勢力であった場合には契約を解除できるようにしておくのが一般的です。

もし、既存の契約書で反社条項が入っていないものがあれば、次回更新時に反社条項を入れたものに差し替えるか、別途覚書で対応したほうが良いでしょう。東京都の暴排条例においても、そうした文言を記載することは努力義務として定められています。

2 事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。

一 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。

二 工事における事業に係る契約の相手方と下請負人との契約等当該事業に係る契約に関連する契約(以下この条において「関連契約」という。)の当事者又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約の相手方に対し、当該関連契約の解除その他の必要な措置を講ずるよう求めることができること。

三 前号の規定により必要な措置を講ずるよう求めたにもかかわらず、当該事業に係る契約の相手方が正当な理由なくこれを拒否した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約を解除することができること


反社会的勢力の巧妙化、不透明化によって、知らない間に巻き込まれるリスクが高まる中で、企業として事前に対策を講じることが肝要であることはお分かりいただけたと思います。

こうした反社は対企業を直接狙って近づいてくるばかりではなく、初めは役員や代表者を狙って近づいてくることもあります。従業員への教育はもちろん、経営者側においてもそうしたリスクがあることを認識した会社経営が求められています。また、スルガコーポレーション事件で明らかになったように、上場企業だから反社と関わりがないということは全く言えません。過信せずに、反社チェックを徹底して行うとともに、専門機関との協力も密に行うことが予防につながりそうです。